31日の東京株式市場は、東証1部上場銘柄の7割以上の株価が下落した。エジプトの混乱を見て、リスクを回避する動きが強まったためだ。前週末の米ニューヨーク市場でダウ工業株30種平均の終値が1万1823ドルと今年最大の前日比166ドルの大幅安となった流れを引き継ぎ、香港や韓国、インドなどアジア市場も軒並み下落した。
外国為替市場では円高が進んだ。一時1ドル=81円92銭をつけ、東京市場としては5日以来約4週間ぶりに82円台を突破した。リスク回避姿勢を強める投資家が先週末から米国債を買い進めたため米長期金利が下落し、日米金利差が縮小したため、ドルを売って円を買う動きが広がった。中東に近い欧州のユーロも売られ、31日午後5時現在、前週末比1円50銭円高・ユーロ安の1ユーロ=111円73〜77銭になった。また、債券を買う動きも強まり、東京債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時1.195%まで低下し(価格は上昇)、約2週間ぶりに1.2%を下回った。
一方、商品市場では、中東の供給不安が拡大したことから原油先物価格が高騰。前週末のニューヨーク市場では一時1バレル=89.73ドルをつけ、約2週間ぶりに90ドルに迫った。31日の東京工業品取引所でも原油先物価格は急騰。一時1キロリットル=5万320円と昨年4月30日以来約9カ月ぶりに5万円の大台を突破した。
日興コーディアル証券の上西晃国際市場分析部長は「OPEC(石油輸出国機構)の増産示唆を受け、原油価格は下落基調だったが、エジプトの混乱で流れが変わった」と指摘。
安全志向の高まりから金にも資金が流入。28日のニューヨーク市場では4月物の金先物価格が一時1トロイオンス=1346.6ドルと前日比26.8ドル上昇し、31日の東京市場でも金先物価格は一時3572円と前週末比68円高となった。
ただ、市場では「政情不安が中東全体へ波及する可能性は低く、原油高や円高は一時的」(大手証券アナリスト)との見方もあり、エジプトや中東の政治状況を注視している。【田所柳子、大久保渉】
◇日本企業の活動、観光に影響も
日本企業の活動や観光にも影響が出始めている。
日産自動車は31日から1週間、カイロ郊外のギザにある組み立て工場の生産休止を決定。スポーツタイプ多目的車(SUV)「エクストレイル」や乗用車「サニー」などを年間約1万台生産しているが、日本人3人を含む駐在員4人は近く国外に避難させる。スズキも、30日から小型商用車を生産している合弁工場の操業を停止している。停止期間は未定で、現地への出張も見送っている。
日立製作所、東芝、ソニーは駐在員や出張者にデモに近づかないことなどを指示。ソニーはエジプト国内の53の小売店の営業を休止した。
グループ全体で計21人がカイロなどに滞在する東京電力も、早期の帰国を検討。丸紅は、駐在員と家族9人に国外への退避を指示。三菱商事は駐在員3人、双日は駐在員1人を自宅待機にしている。
観光では、旅行代理店大手のJTBは29日、行き先にエジプトを含むすべてのツアーについて、2月末出発分までの中止を決め、約3000人がキャンセルを余儀なくされた。業績への影響は「現時点ではそれほど大きくない」(同社)が、旅行需要が増える春休みやゴールデンウイークまで混乱が続くことを心配している。
同様に、2月4日出発分までのツアー中止を決めていた近畿日本ツーリストは31日、混乱収拾には時間がかかると判断し、中止対象を3月4日出発分まで拡大した。同社は「世界遺産を巡るツアーは、特にシニア層に人気がある。同国のピラミッドに代わる旅行先も見当たらず、早く平穏になって旅行に行けるようになってほしい」と話している。【谷多由、宮崎泰宏、米川直己、寺田剛】
(Yahoo!ニュースより引用)