国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会は25日(日本時間26日未明)、調査捕鯨の大幅削減と日本沿岸での商業捕鯨を認めることをセットにした議長提案で合意できずに閉幕した。
次期総会での提案の取り扱いも宙に浮いたままだ。IWCの機能不全ぶりが改めて浮き彫りになり、日本の捕鯨が今後、どう進むのか分からないままだ。
IWC加盟88か国のうち、今回の総会に参加した国は69か国で、おおまかに分類すると反捕鯨国がやや多い。
焦点となったマキエラ議長の提案は、日本が南極海で実施しているクジラの頭数など資源状態を調べる調査捕鯨の約850頭の捕獲枠(実際の捕獲頭数は約500頭)を、6年目に200頭まで削減し、代わりに日本沿岸で年間120頭の商業捕鯨を認める内容だ。
日本は、アメリカ、ニュージーランド、ノルウェーなどの賛成を見込んでいた。だが、総会前の事前調整が不調で、マキエラ議長は開幕直前に「病気」を理由に欠席。総会で、リバプール議長代行も開幕直後に「休会」を宣言し、交渉は、迷走状態に入った。その後の非公式交渉で、オーストラリアは捕獲枠を認めない立場を捨てず、中南米諸国も巻き込んで、他の反捕鯨国への働きかけを強めた。
米国も交渉の迷走ぶりを見て、自国の関心事であるイヌイットなど先住民が生存のために行う捕鯨だけを認める内容を議長提案から抜き出し、修正案を提出。ニュージーランドも、24日にマッカリー外相が、日本の調査捕鯨の廃止を求めた豪州の国際司法裁判所への提訴に同調することを示唆。日本が援軍と期待していた有力2国との亀裂が明らかになった。
今後の議長提案の取り扱いでも、日本は防戦を強いられた。日本は、議長提案を土台に今後も議論を続けることを主張したが、オーストラリアなどは提案に沿った協議を拒否。リバプール議長代行の判断で「熟考期間」を設け、来年以降の総会で再度議論するというあいまいな結論で、08年から日米を中心に模索された妥協案作りは「振り出しに戻った」(舟山農水政務官)。
合意見送りで、日本の調査捕鯨は当面現状が維持される。ただ、国内には鯨肉の消費量が減り、在庫が年間の供給量に匹敵する4000〜5000トン積み上がており、国際的な批判を受けながらの捕鯨の継続を疑問視する声も出ている。(アガディール 実森出、寺村暁人)
(Yahoo!ニュースより引用)