日本航空の支援を検討している企業再生支援機構がまとめた日航の再建計画案が16日明らかになった。グループ全体の3分の1に当たる1万5700人の人員を削減するほか、子会社を現在の110社から売却や統合で57社に減らすなどの抜本的なリストラ案を示した。路線網は平成23年度までに国内線131路線を119に、国際線は93から79に減らす方針だ。支援機構は、この再建計画をもとに19日に支援を決定する。
「大型機の大量保有、硬直的な人件費など構造的高コストからの脱却を図ってきたが、年金債務などのレガシーコスト(負の遺産)の削減が遅れがちで抜本的な収益改善には至らなかった」。再建計画は日航の経営悪化の要因をこう分析し、今後3年間をかけて金融支援による負債の圧縮や事業規模の縮小による経営の効率化を図る考えだ。
再建計画には支援機構が第三者割当増資の引き受けによって日航に3千億円を出資するとともに、既存株式の100%減資を実施することを明記した。
同時に金融支援を行い、金融機関や企業年金基金などが保有する債権総額1兆1579億円のうち無担保の8795億円に対し、83%の債権放棄を求めた。債権放棄額は金融機関が32社合計で3585億円に達し、年金基金も2119億円にのぼった。これにより、現在7800億円に膨らんでいる有利子負債を4100億円まで圧縮する。
支援機構からの支援決定に伴い、日航のほか運航子会社の日航インターナショナル、金融業のジャルキャピタルも会社更生法の適用を申請する。将来はこの3社を1社に合併させる。
グループ会社の抜本的な再編にも取り組み、22年度中に24社を売却するほか、29社を統廃合によって削減する。赤字の貨物専用機事業からの撤退も検討する。
効率化に向けて「ジャンボ機」の愛称で知られるボーイング747型機は、現在保有する37機を26年度までに全廃する。国内・国際線ともに低収益路線から撤退し、運送効率のいい中小型機やリージョナル・ジェットを積極的に導入することで収益向上を図る。
一方、競争力を強化するため、今後3年間で機材改修や情報通信システムの基盤などに1260億円の投資を計画している。
■日本航空の経営再建案のポイント
・人員削減1万5700人。平成26年度までに37のジャンボ機はすべて退役
・子会社110社を57社に半減。海外27支店、国内4支店を閉鎖する
・不採算の国際14路線、国内12路線から撤退
・日本航空と主力運航子会社の日本航空インターナショナル、金融業のジャルキャピタルの3社が会社更生法の適用を申請する
・商取引債権以外で総額7300億円の債権放棄を要請
・現役社員と退職者の同意を得た年金改定案を採用
・100%減資などを検討の上で実施し、株主責任を明確にする