経営再建中の日本航空が、企業年金の削減手続きでOBの3分の2以上の同意取り付けに失敗した場合、再建を主導する企業再生支援機構は年金基金を解散する方針であることが9日、明らかになった。
解散の場合、OB年金の削減率は現計画の約30%から約60%に跳ね上がる見込みだ。日航は期限としている今月12日時点で3分の2に達しなければ、22日まで手続きを延長し上積みに全力を挙げる。
日航の年金削減計画は、現役社員で53%、OBで30%、給付額を引き下げるもので、現役社員については4日時点で同意が3分の2を超えた。一方、約9000人のOBからの同意取り付けは難航しており、4日時点で約3000人、9日でも約4000人にとどまっている。
年金基金では、解散時に必要な積立額5330億円に対し、年金資産は2918億円となっており、日航の試算では、削減率は現役、OBともに約6割にまで拡大するという。
支援機構が基金の解散という強硬姿勢をとるのは、日航を法的整理で再建するのにともない、融資枠や政府保証など一時的に1兆円を超える規模の公的資金が必要となる公算があるためだ。
OBが受け取る企業年金は法律で厳格に保護されており、会社更生法に基づく再建過程でも通常は大幅な減額とならない。しかし、日航のケースでは、公的資金が年金給付の原資に回る可能性があり、政府や支援機構は国民の理解を得られないと判断している模様だ。
政府は一方で、22日の最終期限までに3分の2の同意が取れれば、現計画の削減率を、今後の再建過程にも反映させるよう機構に求めている。
焦点となっていた年金削減問題が、現役・OBの同意による減額か基金解散で解決する見通しとなったことから、政府は、年金を強制的に減額できる特別立法を見送る方向で調整に入る。