【写真特集】ヤマハのフラッグシップVMAX
東京都大田区に住む信金職員、松本雅晴さん(46)は38歳の時にオートバイの免許を取った“遅咲き”ライダーだ。そして、親子ツーリングを趣味にしている。元々は車が趣味で大型のRVに乗っていたが、1人で乗る時の無駄が気になるようになり、二輪免許を取得した。現在は2台目で、独BMW社の排気量1200CCの大型マシンだ。
子どもは、中学3年の大貴君(15)▽小学6年の双子のあかりさん(12)▽ひかりさん(12)の3人いる。「みんなにせがまれますが、一度に乗せられるのは1人だけ。学校の成績や家での手伝いをポイントに換算して順番を競い合うほどです」。その結果、昨年出掛けた30回以上のツーリングのうち、半分は子ども連れで、ゴールデンウイーク、夏休み、9月のシルバーウイークの3度の大型連休はすべてテント泊まりのロングツーリングに出掛けた。
「意外にも、家族一緒に車でドライブしていたころより親子の会話が増えたんです」
そこで力を発揮するのがヘルメットに内蔵したマイクとスピーカーを使い、走行中も前後で会話できるインターカム装置だ。ひかりさんは「家とも車とも違って、オートバイは必ずお父さんと1対1になれる。普段は話さない学校のことや友だちのことを話しながら乗るのが楽しい」という。あかりさんはよく温泉選びを話題にする。ツーリング途中に立ち寄り、休憩室で昼寝し再び出発するのがあかりさんのお決まりのスタイルだ。
食べ盛りの大貴君は旅先で味わう現地料理や、見知らぬ人との触れ合いを楽しみにしている。親子連れのツーリングライダーはまだ少数で、どこに行っても「格好いいね。どこから来たの」などと声を掛けられる。松本さんは「初めは人見知りしていたが、次第に社交性が付き、親としてうれしい」と喜ぶ。
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子どもたち3人は「大きくなったらオートバイに乗りたい」と口をそろえる。妻の裕紀子さん(45)も乗れるので、いつか家族5人でツーリングするのが松本さんの夢だ。その日のために、子どもたちには最優先で安全意識を持たせるように心がけている。
例えば、ツーリング中は交通状況は刻々と変化する。「今そこから人が飛び出してきたら、どうやって避けるか」「この場面ではどこに気を付けて危険を予測するか」。インターカム越しにシミュレーションを繰り返す。
もう一つ、「オートバイに乗る前に車の運転を経験させる」というルール作りも既に夫婦で話し合っている。
「自転車には自転車、車には車、オートバイにはオートバイの動きのパターンがある。それを理解し、相手を思いやって事故を避ける技術を身に着けたら初めてオートバイの許可を出すつもりです」
道路交通法上は今年、二輪免許が取得できる大貴君でも実際には先になりそうだ。大貴君も現実感はなさそうで、「満タンで約300キロもある大きなオートバイの運転なんて想像もつかない。自在に乗りこなすお父さんを尊敬する」と話す。
松本さんのツーリングは当面、親子のきずなを深める大切な時間として続きそうだ。