米アップルが27日、情報端末「iPad(アイパッド)」を発表し、電子書籍市場への本格参入を表明したことで、市場がさらに拡大することは確実と見られている。
◆ハードとネット
アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)はアイパッドの発表記者会見で、「我々は(最大手の)アマゾンよりもさらに先を行く」と宣言し、電子書籍市場でも覇権を奪う決意を強調した。
アップルは、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」や携帯電話「iPhone(アイフォーン)」で、音楽、通信業界を揺るがしてきた。さらに電子書籍販売サイトを開設し、ハードとネットの両輪で電子書籍市場の攻略を狙う。
電子書籍ブームに火をつけたのは、2007年11月に発売されたインターネット販売最大手アマゾン・ドットコムの「キンドル」だ。
通信機能を内蔵し、外出先でもアマゾンのサイトから簡単に電子書籍を購入できる点が人気を呼んだ。これをソニーが追い、米国での端末シェア(占有率)はキンドルが60%、ソニーが35%程度とされる。
多くの電子書籍の価格が1冊あたり10ドル(約900円)程度と、紙の一般書籍の2分の1〜3分の1以下だ。数十冊購入すれば端末代の「元が取れる」割安感と、1000冊分以上の情報を記録できる手軽さがブームを後押ししている。
米調査会社アイサプライによると、世界の電子書籍端末の2009年の販売台数は520万台と、08年の約5倍に達し、13年には2200万台まで拡大すると予想する。
◆「紙」しのぐ?
電子書籍の業界団体によると、09年7〜9月期の米国での電子書籍の販売額は4650万ドルと、前年同期の3倍を超えた。アマゾンのサイトでは、昨年末商戦で電子書籍の売上高が一般書籍の売上高を上回った。「市場全体でも5年以内に電子書籍が主流になる」(ソニー)との見方もある。
図書館でも蔵書の電子化が進んでいる。米国では各地の図書館が電子書籍データの貸し出しも始めている。昨年11月には全米26か所の大学図書館などを結ぶ世界最大の仮想電子図書館が稼働した。専門書など約500万冊の電子書籍が無料で利用可能だ。
サンフランシスコの非営利組織(NPO)「インターネット・アーカイブ」は各地の大学図書館などと提携し、歴史的な書籍や著作権切れの書籍を1ページずつ手作業で電子化する作業を進めている。
◆高額印税
米出版社協会のエド・マッコイド・デジタル政策部長は「低迷する出版業界で、電子書籍の成長は救いだ」と話す。
しかし、流通や価格、著作権交渉の主導権をネット企業に奪われる警戒感は強い。
アマゾンは20日、電子書籍の低額販売に著者らが合意すれば、キンドル向け電子書籍の売上高の7割を著者らに支払う仕組みを導入すると発表した。著者らは通常の印税よりも高額の報酬を得る仕組みだ。
大手出版社は、「著者が囲い込まれる」と警戒している。このため、米の大手出版社の一部は、電子書籍の発売時期を、紙の書籍よりも数か月遅らせる対抗策を講じている。
米大手出版社サイモン・アンド・シュースターのアダム・ロスバーグ副社長は「一部のネット企業が大きなシェアを持つのではなく、端末やネット流通などで健全な競争環境を確保する必要がある」と主張している。
(Yahoo!ニュースより引用)